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研究開発事例


セメント・コンクリート

塩化物イオン拡散係数の測定へのEPMAの応用

1. 塩化物イオン(Cl-)拡散係数

   

海塩や融氷剤の影響を受けるコンクリート構造物の耐久性は、コンクリート中にCl-が浸透し、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊して生じる鋼材腐食により決定される。したがって、これら塩害によるコンクリート構造物の寿命(t)予測には、Cl-の浸透予測が重要である。Cl-の浸透を拡散現象とみなし、Cl-のコンクリートへの見かけの拡散係数Daを求めることで、Fickの第2法則の解析解を用い、Cl-の浸透予測&寿命予測がなされている。

 

2. Cl-拡散係数の測定方法

 
Daの測定方法としては、試験体を塩水に浸せきし、Cl-の浸透プロファイルを求める方法が広く実施されている。この浸透プロファイルを求める方法には、試験体を 1)コンクリートカッターによりスライスしさらに粉砕し、または 2)研削により粉末を得、酸溶解後、全Cl量を測定する方法、3)EPMAにより試料断面のCl-濃度プロファイルを求める方法がある。
当社のEPMA測定技術では、Cl-が浸透するペースト部分のみでのCl-濃度を評価できる。
測定法 分解能 Daが評価可能な浸透深さ 骨材の影響 推定精度 複合劣化
スライス 5~10mm 50mm~(浸透大に適当) 低~高 検出不可
研削 0.5~1mm 10mm~ 検出困難
EPMA 50~100µm 1mm~(浸透小でも有効) 無~小 検出可能
 

3. EPMAによる測定例

 

⑴ 超高強度コンクリートへの適用(150MPa)

 

⑵ ひび割れを有したコンクリートへのCl-浸透

 

4. Cl-関連研究の文献

 

1. 上村祐一郎、小川彰一、山田一夫、小早川真、鉱物組成の異なるセメントを用いたコンクリートの塩化物浸透に関する一考察、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.24、No.1、pp.825-830、2002(奨励賞受賞)

2. 細川佳史、山田一夫、高見満、杉山隆文、浸せき法および電気泳動法により評価した塩化物イオン拡散係数に関する検討、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.25、No.1、pp.、2003(奨励賞受賞)

3. 山田一夫、Hassan Zibara、細川佳史、平尾宙、塩害環境下でのコンクリート構造物の寿命予測に及ぼす要因の数値計算による評価、土木学会年次学術講演会講演概要集、Vol.58、V-015、pp.29-30、2003(講演賞受賞)

4. 細川佳史、森大介、山田一夫、山本正義、EPMAにより測定した塩化物イオン濃度プロファイルから推定した見掛けの拡散係数、セメント・コンクリート論文集、No.57、2003(投稿中)

 

研究・技術開発
太平洋セメント中央研究所

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