アクアリウムの立役者バクテリア

水創りで知っておきたい
「生物ろ過」のこと

自然界の“ゴミ”は
バクテリアがきれいに食べる!

自然界では、動物のフンや死骸、植物の落ち葉や枯れ枝などが絶えず発生しています。しかし、それらは溜まりつづけることなく、いつの間にか消えてしまいます。そのことに大きな役割を果たしているのが、目に見えない小さな生き物……微生物(バクテリア)です。バクテリアは、一見すると“ゴミ”のような自然界の遺物、有機物などを食べて分解し、安全なものにして自然界に戻しているのです。

アクアリウムの水槽でも、自然界と同様にフンや死骸などの“ゴミ”が発生しますが、水槽だけではバクテリアによる分解力が足りず、水が汚れてしまいます。水をきれいにするにはスポンジやウールマットを使った「物理ろ過」もありますが、これだけでは水の汚れは取りきれません。そこで、バクテリアの力で汚れを分解することで、自然界に近い水を創る方法を用います。これが「生物ろ過」です。

水創りのフロー
〜水槽立ち上げの流れ〜

アクアリウムの水槽を立ち上げる時、もっとも重要になるのが水創りです。一般に使用される水道水は殺菌されているため、バクテリアがほとんどいません。そのため、しっかりとした手順と時間をかけて水創りをしなければ、アクアリウムを始めることはできないのです。ここでは、淡水の熱帯魚水槽の例を紹介します。

  • ①水槽を設置する

    水槽は、水を入れるととても重くなります。家具の上などではなく、水槽専用の台にマットを敷いてのせます。

  • ②底砂を入れる

    水槽を設置したら、底砂を入れます。石や流木を入れるなら、この時にレイアウトしましょう。

  • ③水草をレイアウトする

    水草を植えるときは、砂の高さ程度まで水を入れておくと作業が楽です。ソイルの場合は、水の濁りがなくなってから水草を植えると良いです。

  • ④水を入れる

    水は、1日以上汲み置きするか、中和剤を使ってカルキ抜きをします。水槽へは、勢いを弱めながら、ゆっくり注ぎます。

  • ⑤器具を設置する

    水質を維持するろ過材入りのフィルターを設置します。このタイミングで、バクテリア(硝化菌)を添加すると比較的はやく立ち上がります。

  • ここがポイント!

    ⑥初期メンテナンス

    ここまで準備をしたら、この後1〜2週間は、フィルターなどを作動させた状態で、様子をみます。

  • ⑦生き物を入れる

    およそ2週間が経過すると、水質が安定するので、生き物を水槽に入れます。

  • ⑧完成!

    これで水槽の立ち上げが完了です!

<注意>
生き物は、すぐに水槽へ移さず、入っていたビニール袋(入れ物)ごと水槽に浮かべ、水温を合わせます。熱帯魚水槽の適正な水温は、約25℃です。その後、ビニール袋の水を少しずつ水槽の水と入れ替えながら、水槽の水に馴染ませていきます。

水創りのキモ
〜水槽で起きている
目に見えない出来事〜

生き物のフンやえさの食べ残しは、様々な微生物によって分解されますが、この過程で、生き物に高い毒性のあるアンモニアや亜硝酸が発生します。水槽内にこれらがとどまると生き物に悪影響を与えるため、これらを分解することができる特殊なバクテリアが必要になります。

ところが、立ち上げたばかりの水槽には、アンモニア・亜硝酸を分解するバクテリアがほとんど棲んでいません。さらに、これらのバクテリアが増える速度は遅く、安定して増えるためには住処を与える必要があります。このため、凹凸のあるろ過材を準備してバクテリアの住処を提供することで、バクテリアが増えやすい環境を整えます。

  • ■水を入れてから5日後

    バクテリアは、水草や底砂、空気中などから水槽内に入りますが、 まだ数が少ない状態です。

    水を入れてから5日後では、バクテリアはまだほとんど増えていません。

  • ■水を入れてから1〜2週間後

    フィルターのろ過材に、生物ろ過に必要なバクテリアが増えはじめます。水槽の水も濁りが消えて、透明度が上がっていき水創りが完成しました。

    水を入れてから1〜2週間すると、ろ過材の表面などにたくさんのバクテリアが繁殖し、ぬるぬるした膜状のものができ始めます。これが、生物ろ過による水創りのキモとなります。

アクアリウムは人工的なシステムによって水槽内で管理されていますが、中の生き物は自然の環境に近い条件でしか生きられません。現在の技術では自然とまったく同じ環境を構築することは不可能ですが、自然環境から学んだ様々な技術を組み合わせることで、アクアリウムを自然に近い条件にすることができます。これが、アクアリウムを長く楽しむ秘訣となります。