1. |
技術開発の背景 |
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セメント産業は、廃棄物・副産物をリサイクル資源として積極的に活用しており、その量は2004年度では約2,900 万tに達しています(参考:廃棄物の最終処分量(2003年度)=約4,000万t)。循環型社会を構築する上で、静脈産業としてのセメント産業の役割は、ますます大きくなるものと期待されています。
セメントの国内需要が増加傾向にある時には、現状の技術レベルにおいても生産数量に比例して、リサイクル資源の使用量を増加させることが可能でした。しかし、今後のセメントの国内需要は、大幅に増加する見込みはなく、むしろ縮小傾向であると予想されています。そのような環境下では、セメントの品質を維持しつつリサイクル資源の利用を拡大することは限界に近づいています。そこで、当社は、リサイクル資源の使用量を拡大するために新たなセメント製造技術を開発しました。
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2. |
開発した技術の概要 |
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セメントは、セメントキルンを用いてエーライト・ビーライト・アルミネート・フェライトの4種類の鉱物を主体としたクリンカを製造し、これに石膏を加えて製造しています。
セメントの品質を維持し、リサイクル資源量を拡大するにはセメント中の水和活性の高いアルミネート鉱物量を調整する必要があります。それゆえ従来技術ではセメント原料中のアルミナ量を調整するためにリサイクル資源の使用量に制約がありました。
そこで、天然原料に比べてアルミナ含有量が高い傾向にあるリサイクル資源を大量に原料として使用しても、アルミネートではなく水和活性のほとんどないゲーレナイトを生成させる製造方法を開発し、リサイクル資源の使用量を拡大させることを可能としました。本方法により製造されたクリンカは、ビーライトを主体としてゲーレナイトを少量含有するクリンカであり、従来方法で製造したクリンカと適切な割合で調合し、石膏を加えて最終製品セメントとします。
この最終製品セメントには、構成鉱物としてゲーレナイトがわずかに含まれますが、従来品と品質は変わりません。
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3. |
リサイクル資源の増加可能量 |
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この技術導入によって、使用可能なリサイクル資源量は、最終製品であるセメント1t当り約30kg-wet増加します。
(参考:2004年度当社実績=345.7kg-wet)
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4. |
今後の事業展開 |
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本製造技術は、既に工場実機規模での実証試験、品質評価試験を終え実用化の目処がついています。事業化するためには設備投資を要するものの、静脈産業の責務として社会的に意義が高い事業と判断し、準備を進めています。
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