フィッティング例
セメントの更なる品質安定化のため、『太平洋セメント品質予測システム「TQPS®」』を開発しました。
近年のセメント製造における各種廃棄物の原燃料代替利用率の上昇に伴い、セメント製造にはより厳密な品質管理が求められています。
従来の試験項目に加えて、当社では2005年よりXRD/リートベルト法※1を国内工場に順次導入してきました。さらに次段階としてリートベルト法を含む各種試験データを連携的に活用するシステムを構築し、さらなる品質の安定化および改善に取り組んでいます。その一環として、当社は『AI技術活用の品質予測システム「TQPS®」』を開発し、特許※2を取得しました。
セメントは粉末状の無機化合物の集合体で、水との化学反応により硬化する性質があります。表1に示すように、セメントの品質とは、硬化までの流動性や時間、硬化後の強度や発熱量などを指します。品質はセメント製品を構成する化合物の比率(鉱物組成)に強く影響されます。そのため、セメントの種類毎に適切な鉱物組成が異なります。そこで、出来上がった製品の鉱物組成を管理するシステムが必要です。
これまでは、セメントの鉱物組成は化学組成から理論計算にて求めていましたが、リサイクル原燃料の増加に伴う微量成分などの影響により、実際の鉱物組成と差が生じる場合がでてきました。また実際の鉱物組成を測定するには、時間がかかり過ぎていました。
以上により、鉱物組成をより正確に常に監視できる管理システムが重要となりました。そこで当社が新たに導入したのがX線解析装置(X-Ray Diffraction:XRD)を利用したXRD/リートベルト法による高精度品質管理システムです。これにより、セメント製品中の鉱物組成を測定する完全に自動化された高精度の品質管理が可能となりました。時間も非常に短縮され、従来の手法では1試料当たり数時間以上かかっていたものが10分程度になりました。
試料を顕微鏡で観察して、人が直接的に鉱物組成を数える方法。
問題点
試料を蛍光X線により化学組成を測定し、その結果をボーグ式に当てはめて、鉱物組成を確認する方法。
問題点
X線回析装置(X-Ray Diffraction:XRD)で試料のX線パターンを測定し、それをリートベルト法という計算方法で解析することで鉱物組成が直接的に算出される方法。
メリット
1969年にオランダ人結晶学者ヒューゴ・リートベルトが中性子回折のために考案した手法です。X線回折を適用したものをXRD/リートベルト法と呼びます。
XRD/リートベルト法では得られたX線回折図に対して、理論的な回折プロファイルを最小二乗法で精密化し、各鉱物の結晶構造パラメータを決定します。これにより結晶構造を精密化することが可能です。
近年、セメントのような複数種の鉱物を含む試料にも、本法が適用されるようになりました。この際、結晶構造と同時に尺度因子とよばれる各相の比率を示すパラメータも精密化されます。これにより、どの鉱物がどれだけ試料中に含まれているか知ることができるようになりつつあります。セメントの定量に関しては、当社は独自のノウハウを蓄積することで、最適な精度での定量を可能としました。
TQPS®ではニューラルネットワーク※3と呼ばれる情報処理手法を用いて、以下に示すセメントの各種分析値(キャラクター)ならびに製造運転条件(プロセスデータ)と品質特性(プロパティー)の関係を解析し、最適な解が得られるモデルを作成します。
これにより、所定の品質を確保するための各種キャラクターの目標値や製造運転条件を効率的に管理することができ、また、通常では結果を得るために時間を要する強さ試験なども、材齢を待たずに予測値を得ることが可能となります。
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変数
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例
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プロセスデータ
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クリンカー原料
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化学組成、粉末度など
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焼成条件
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キルン落口温度、キルン1回転あたりの平均電力量など
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粉砕条件
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セパレーターの回転数、セパレーターの風量など
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キャラクター
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クリンカー
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化学組成、鉱物組成など
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プロパティー
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水和後のセメント
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強さ、流動性、水和熱など
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本システムの全体概要を以下に示します。同図の通り、セメントのプロパティーを直接的に説明するのはセメントのキャラクターとなり、そのキャラクターを作り込むためのプロセス条件を解析対象に加えたことで、最終的に製造指針等へのフィードバックが期待されます。
TQPS®のセメント品質予測への適用例を、以下のケースを例に説明していきます。
本学習で得られた予測例を目的変数ごとにそれぞれ図1と図2に示します。両図においては目的変数への影響度の最も大きかった2因子をそれぞれ選択して予測を実施しました。
図1からはビーライト量が増加し、フリーライム量が減少する程、セメント強さ28日材齢が向上することが確認されました。これらは既住の知見とも一致しています。
また、図2からは、エーライト量が減少し、ブレーン比表面積が減少する程、セメント水和熱7日材齢は低下するという結果を得ました。これらも既住の知見と一致しています。
2011年度にTQPS®のβ版の開発を終え、2012年度に工場への試験的な導入を行い工場ごとのテスト運用を実施しました。2013年度には各工場担当者へ導入前教育をしたのち、全工場に対して導入を完了しました。さらに、2014年度は本システム運用により得られた解析結果による指針に基づき、工程アクションを実施するためのガイドラインを作成しました。
今後は実製造工程での実施例を積み重ねることで、セメント品質に関係する全てのキャラクターおよびプロセスパラメーターを工場毎に最適化できるものと考えています。将来的に本システムは、セメント品質の安定化に留まらず、セメント製造における原価低減、リサイクル利用向上、および環境負荷低減等にも寄与できると考えています。
このように当社では常に革新的で意欲的な取り組み、品質のさらなる向上や製造コストの低減を通じ、顧客満足向上に今後も努めていきたいと考えています。
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