自然環境(湖沼・海域)
〜干潟環境改善事例〜

水質浄化材「セラクリーン」
環境省ETVマークを取得

環境省ETVマーク

太平洋セメント株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:不死原正文 以下、当社)は、環境省が推進している環境技術実証事業(※)の閉鎖性海域における水環境改善技術分野において「セラクリーンによる環境改善技術」を申請し、実証試験を経て2018年5月14日に同省より、干潟の環境改善技術としてETVマーク(実証番号090-1701)を取得しました。
※環境技術実証事業(ETV:Envronmental Technology Verification):すでに実用化され有用性がある先進的環境技術の環境保全効果ついて等について、環境省が委託した第三者機関により、実環境で実証を行い、環境技術を実証する手法・体制の確率、環境技術の普及促進、環境保全と環境産業の発展を促進する事業。

写真1
写真1
写真3

写真は干潟での施用例です。

干潟は多くの生物を育み漁場を提供し、水質を維持するなど様々な機能を有する大切な自然環境です。しかし、近年の干潟はヘドロが蓄積し悪臭を放つなど環境が悪化し、過去20年間で健全な干潟は1/4程度まで減少しました(2008年水産庁調べ)。その結果、干潟に生息するアサリの漁獲高は20年前の年間20万トンに対し、3割まで落ち込むなど水産業や地域の食文化に影響を及ぼしています。また、アサリは海水のろ過機能を持ち水質の安定化に貢献していますが、その減少により干潟の環境はさらに悪化し続けています。そこで当社では、水質浄化材「セラクリーン」の干潟への散布と農作業で行う「すき込み」を組み合わせた干潟改善技術の開発を2016年に開始しました。
「セラクリーン」はケイ酸とカルシウムを主要成分とする、弱アルカリ性の多孔質資材です。ヘドロが蓄積するなど悪化した干潟へすきこむことで、健全な干潟環境を再生することが期待できます。
当社では、本技術を2017年度環境省ETV事業に申請し採択を受け、専門家の指導のもと第三者機関による干潟改善試験を青森県陸奥湾で実施しました。その結果、干潟環境の改善効果が実証され、ETVマークの取得に至りました。
今回のETVマーク取得により、当該技術の普及が進むことで悪化した干潟の再生に貢献することが期待できます。当社では、水質浄化材「セラクリーン」の普及を目指すとともに、アサリ等の水産資源の回復による地域の水産業や食文化の復活に貢献するとともに、今後も自然環境保全や地域経済への貢献に寄与する製品や技術の開発・提供を進めてまいります。

写真2

写真は干潟での施用例です。

セラクリーンによる
干潟改善メカニズムについて

セラクリーンによる
干潟改善メカニズムについて

干潟を構成する底泥(以下底質)の状態が悪化すると、ヘドロの蓄積により底質の酸性化や貧酸素状態となった干潟は、底質環境が更に悪化し、魚介類が成育できなくなります。
一方底質環境が悪化した干潟にセラクリーンをすき込むことで、
1.底質の軟化および通気性・通水性の確保(貧酸素状態が改善)
2.アルカリ性能により底質の酸性化が改善(ヘドロの分解促進)
3.ケイ酸溶出効果により珪藻(※)の増殖を促進し、アサリ等がエサとして利用します。
その結果、アサリやゴカイ等の生物およびアマモ等の海藻が生育できる健全な干潟の再生が期待できます。
※珪藻:アサリやエビ、ゴカイ等干潟に生息する生物のエサとなる植物プランクトン。

本技術適用前
干潟イメージ

本技術適用前の干潟イメージ

本技術適用前の干潟イメージ

本技術適用後
干潟イメージ

本技術適用後の干潟イメージ

本技術適用後の干潟イメージ

ETV事業実証結果

ETV事業実証結果

底質の酸性化および貧酸素状態となった干潟に対して、セラクリーンを300㎏/a(100㎡)ですき込みました。3ヶ月経過後、本技術適用区では次のようなことが明らかとなりました。
1.pHが0.3上昇し、海水pHと同程度の値まで改善(酸性化の改善)
2.酸化還元電位が130mV有意に上昇(有害な硫化水素発生の抑制)
3.底質中の溶在態ケイ酸濃度が1.6倍上昇(珪藻の増殖を示唆)

底質のpH
(酸性化の目安)

底質のpH(酸性化の目安)

底質のpH(酸性化の目安) 底質のpH(酸性化の目安)
底質のpH(酸性化の目安) 底質のpH(酸性化の目安)

底質の酸化還元電位
(貧酸素状態の目安)

底質の酸化還元電位(貧酸素状態の目安) 底質の酸化還元電位(貧酸素状態の目安)
底質の酸化還元電位(貧酸素状態の目安) 底質の酸化還元電位(貧酸素状態の目安)

溶存態ケイ酸濃度

溶存態ケイ酸濃度 溶存態ケイ酸濃度
溶存態ケイ酸濃度 溶存態ケイ酸濃度

自主試験による
アサリの生育状況調査

自主試験による
アサリの生育状況調査

ETV事業と並行し、当社の自主試験としてアサリを試験区に散布し成育状況を調査しました。10ヶ月後の観察では、本技術適用区のアサリは健全な成長がみられ、生存率は93%と高い結果が得られました。

すき込みなし

すき込みなし すき込みなし
生存率40% 生存率40%

セラクリーンすき込み

セラクリーンすき込み セラクリーンすき込み
生存率93% 生存率93%