革新技術の開発に挑戦し、
CO2回収と利用の
トップランナーとなることを目指します。
代表取締役副社長
北林 勇一
カーボンニュートラル実現に向けて
当社は2050年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現する「カーボンニュートラル戦略2050」を打ち出し、2030年までにCO2排出原単位20%以上の削減と、CO2分離回収と利用に係る革新技術の開発を完了させる移行計画を掲げています。本年12月にはCO2回収型セメント製造プロセス「Carbon Capture Suspension Preheater Kiln (C2SPキルン)」の実証試験を開始するほか、グループ会社のデイ・シイ社川崎工場においてCO2の分離回収、利用から貯留までを実機レベルで実証する「カーボンニュートラルモデル工場」の検討に着手しました。
カーボンニュートラルは最大の成長戦略
コンパクトな設備で効率よくCO2を回収できる、当社独自かつ世界初となるC2SPキルンは、世界標準となることを目指しています。現在、世界にはおよそ4,000基のセメントキルンがあり、全世界でカーボンニュートラルの実現を目指すうえでC2SPキルンには大きなニーズが生まれるものと期待しています。また、分離回収したCO2をエネルギーとして利用するメタネーションについては、セメント製造で再利用するだけでなく、社会で幅広く利用することを目指し、機械プラント会社やガス会社と協働して取り組んでいます。
2030年以降の移行計画
2030年以降は、C2SPキルンでのCO2の分離回収、また炭酸塩化によるCO2固定やメタネーションといったCO2利用技術をグループ内に順次展開していきます。C2SPキルンおよびCO2利用設備の実装費用は、現在の技術でキルン1基あたり1,000億円超、国内グループ全体では2兆円超と試算しています。今後、技術の進化にともない、設備費は低下していくものの、これだけの設備投資を一民間企業で負担するには限界があり、カーボンニュートラル移行コストのセメント価格への転嫁の仕組みや、負担を公平にする適切なカーボンプライシングの導入など、政府・産業界全体で検討する必要があると考えています。
カーボンニュートラル実現に向けた課題
「カーボンニュートラル戦略2050」はパリ協定に整合すると考えています。これは、パリ協定整合として経済産業省が公表したトランジション・ファイナンス技術ロードマップに基づき、2023年3月に日本政策投資銀行から当社に対してトランジション・リンク・ローンが実行されたことから明白といえます。一方で、SBT(科学的根拠に基づく削減目標)としての認知のためには、混合セメント化といった即効対策が必須ですが、日本の市場や製品規格の制約などから急速な展開は容易ではないといえます。各種革新技術の開発実用化に加えて規格整備についても加速して取り組んでいきます。
酸素燃焼とした仮焼炉に原料石灰石の脱炭酸反応を集中させることで、セメントプロセスから高い濃度のCO2を直接的に回収できる