環境マネジメントシステム(EMS)
当社は環境経営方針に、環境汚染防止にとどまらず、サーキュラーエコノミーの構築、カーボンニュートラル実現、環境負荷低減、水資源保護や生物多様性といった社会的な環境問題への積極的な取り組みを挙げ、これらを重要な経営課題と位置づけ、環境パフォーマンスの向上に努めています。
環境経営方針
当社は社会的な環境問題への積極的な取り組みを重要な経営課題と位置付け2006年1月に「環境経営方針」を制定しました。全ての事業活動において以下の6項目に重点的に取り組むとともに、国際社会から地域社会までの広範なステークホルダーとコミュニケーションを図り、GCCAならびにUNGCの一員として、持続可能なセメント産業の在り方を追求していきます。
2006年1月制定
2024年4月改定
- 環境に配慮した事業活動
事業活動における環境影響を適切に評価し、環境に配慮した製品・技術の開発と採用により、環境負荷の低減に取り組む。あわせて地域社会の一員として、環境保全活動に取り組む。 - 環境法規制等の遵守
事業活動において適用を受ける環境に関連する法規制ならびに当社が同意するその他要求事項を確実に遵守する。 - サーキュラーエコノミー構築への貢献
セメント産業の特性を活かし、リサイクル資源活用技術の高度化を進め、環境負荷低減と経済成長を目指すサーキュラーエコノミー構築へ貢献する。 - カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
既存技術の最大活用及び革新技術の開発・順次展開を図り、全社をあげてサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現に取り組む。 - 国際協力
当社が保有する環境保全や省エネルギーならびに廃棄物等のリサイクルに関する技術の海外への移転と普及を促進する。 - 自然保護
自然との共生に役立つ製品と技術を提供することで、水資源や生物多様性等の保全・回復に貢献し、ネイチャーポジティブの実現を目指す。
生産部担当役員を委員長とした「環境経営委員会」を設置し、環境経営の推進と環境マネジメントシステム(EMS)を実践しています。
当社は1997年6月から工場単位でISO14001の認証登録を開始し、1999年までに直轄6工場すべてが認証登録を受けました。2009年には、本社・支店・中央研究所(現研究開発本部)にまで適用範囲を広げた全社EMSを構築し、2024年2月には(一財)建材試験センターより全社として5回目の更新審査を受け、認証登録を継続しています。
グループ会社を含むセメント工場のISO14001認証取得率は100%です。海外でもISOを主流とする国のセメント製造事業所の取得率は100%であり、積極的に環境保全に取り組んでいます。ISOを主流としない国のセメント製造事業所では、独自のEMSを運用しています。
リスク管理
- 環境リスク低減
重大環境事故の発生を未然に防止するために過去事例を基に適宜必要な対策を講じています。 - 自然災害への対応
近年、異常気象による自然災害の激甚化が課題となっています。当社では、豪雨による工場内の冠水リスクを抽出し、排水ルートと処理能力を確認後、必要な投資工事を進めていく予定としています。 - 環境法令遵守
当社では太平洋セメントグループ全体の環境法令遵守のため、定期的にグループ会社へ環境パトロールを行い、法令遵守状況の確認に取り組んでいます。
EMSの確実な運用による継続的改善活動を実施し、以下の観点から着実に取り組んでいきます。
- 重大環境事故・重大環境クレームゼロ
2024年度は残念ながら直轄工場で発じんによる重大環境クレームが1件発生しました。工場周辺住民の皆さまに多大なるご迷惑をお掛けしたことを猛省しております。類似の事故・クレームが二度と起きないように明らかになった課題・問題に対して是正処置と予防処置を実施しました。 - 緊急事態(地震・津波・油流出・集中豪雨・火災・発じん)に強い工場づくり
各緊急事態に対応したマニュアルを都度見直し、教育・訓練を定期的に実施することで、あらゆる緊急事態に対応できる現場力を備えた人材を育成していきます。環境リスクを抽出し、対策を立案・実行することで緊急事態に強い工場づくりを目指しています。また、大規模災害時には行政と連携し、迅速かつ円滑に災害廃棄物を処理するための体制を平時から整備しています。 - グループ全体での環境法令遵守体制の定着
グループ会社に対しては、環境法令チェックリストを活用した確認とフォローアップの仕組みにより、環境法令改正に適宜対応しております。また、定期的な環境パトロールを通じて環境法令遵守が確実に維持されているか確認しています。

油漏洩訓練(熊谷工場)
内部環境監査
2024年度も当社の全事業所を対象として内部環境監査を実施しました。今年度の監査の重点観察項目として環境法令およびそのほかの要求事項の遵守評価の確認、PCB含有機器の抽出、外部コミュニケーションの確認、目標未達項目の是正処置、工場対象の事項として環境不適合に関する是正・予防処置のフォロー状況、工場対象の事項として自然災害による設備の冠水リスク抽出および対策立案、支店対象の事項としてサービスステーションの緊急事態対応の確認を実施しました。
総指摘件数 | 改善要求件数 | 是正処置件数 | |
2022年度 | 29 | 3 | 3 |
2023年度 | 26 | 5 | 5 |
2024年度 | 27 | 8 | 8 |
環境負荷の低減
当社は、環境経営方針に基づき、環境法規制等に遵守し、環境に配慮した事業活動に取り組んでいます。
当社工場では、地震津波対策として対応手順書を準備しております。緊急事態には安全な装置の停止と迅速な避難ができるように手順書の有効性確認を行っています。また、行政と連携することで情報の共有化や被害の最小化にも取り組んでいます。
多様化する廃棄物・副産物を最小限の環境負荷で安定して処理するために、設備投資や新技術の開発が求められています。屋内型置場や密閉式受入設備などの新設・増設を計画的に進めております。
地域住民の皆さまと共生しながら事業活動を進めてまいります。寄せられた環境情報に対しては、できる限りすみやかに現地に出向き、状況確認、原因調査、状況説明のうえ、当社に起因する場合は改善策を講じています。
水質汚濁防止
当社グループの公共用水域への排水は、ほとんどが冷却水で、水質汚濁防止法に規定される汚水ではありません。セメント工場では受け入れた水資源を循環水として再利用しており、公共用水域への排水を最小限にするよう努めています。また、油タンク、酸・アルカリタンクなどの周りには防液堤を設け、さらに公共水域への排水ルートには、沈殿池(槽)、油水分離槽、油膜検知器、pH測定器、懸濁物質検知器を設置して、汚染物質の漏洩対策を講じています。
大気汚染物質
セメント製造における主な大気汚染物質は、セメントキルンの排ガスに含まれるNOx、SOx、ばいじんです。これらを適正に管理するため、排ガス中の排出濃度の連続測定器の導入を進め、適正運転に努めると同時に、脱硝装置の強化、排ガス処理装置のバグフィルター化などの対策を進め、「2010年度の排出レベルを維持すること」を目標として大気汚染物質の排出制御に努めています。
土壌汚染防止
2007年度から2008年度にかけてセメント工場敷地内で土壌汚染の可能性がある場所について、専門コンサルタントによる土地履歴などの調査とリスク評価を実施したうえでボーリング調査を行い、土壌汚染の有無を確認しました。調査の結果、処置の必要性が発見された所では、地下水汚染を監視するための観測井戸の設置や汚染土壌の除去などを実施しました。また、油・酸・アルカリタンクならびに配管などからの漏洩液の浸透防止対策として埋没配管の架空化工事や劇物漏洩検知システム導入等を行い土壌汚染の防止に努めています。
PCB廃棄物管理
当社グループは「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(以下、PCB特措法)に基づき、高濃度/低濃度PCB廃棄物の保管および処理を適正に行っています。
特にPCB特措法に定められた処分期限が早い高濃度PCB廃棄物については、優先的に処理を進めてきましたが、処分期限後において新たに発見された事例をふまえ、社内再調査を行っています。その結果、2024年度末時点で349台を保管中で、2025年度中の遵法処理を進めています。今後も法令に従い適切に対応していきます。
(単位:個数)
廃棄物 | 2023年度末 保管 |
2024年度 新規対象 |
2024年度 処理実績 |
2024年度末 保管 |
2025年度 処理計画 |
コンデンサ | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 |
トランス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
安定器 | 2 | 445 | 99 | 348 | 348 |
合計 | 2 | 446 | 99 | 349 | 349 |
環境配慮型粉体急結剤「ビスコショット」
吹付コンクリートは、トンネル掘削後に現れる地山に直接吹きつけることで掘削部の崩壊を防ぐための材料として用いられています。瞬時に凝結し強度が発現することが求められるため、フレッシュコンクリートに急結剤を添加して使用します。通常の吹付コンクリートでは、吹き付け時のリバウンド(はね返り)や垂れにより、約20~30%が地山に付着せずに落下してしまうため、その抑制が課題とされてきました。
太平洋マテリアル社と花王(株)が開発した「ビスコショット」は、特殊増粘機能を付与することで施工時のリバウンドを低減させた環境配慮型の粉体急結剤です。太平洋マテリアル社の急結成分と花王(株)の特殊増粘剤を混合することで、吹付ノズルの先端まではポンプで押し出しやすいサラサラした状態を保ちながら、吹き付け後は地山に付着しやすいように瞬時に粘り気をもつ材料の設計を実現しました。2022年より太平洋マテリアル社小野田工場の模擬トンネルや実現場トンネルにて実証施工を行い、約3割のリバウンド量低減効果を確認しています。リバウンド量の低減による産業廃棄物の削減、材料コストの節約といったメリットに加え、コンクリート使用減にともなうCO2排出量削減も見込めます。
