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社外取締役メッセージ


社外取締役が、それぞれのキャリアや知見に基づいて、当社グループのガバナンス体制および企業価値向上に向けた取り組みに対する評価や提言を語りました。

海外展開における贈収賄、腐敗に対する対応も含め、グローバルガバナンスと危機管理能力のさらなる強化をサポートします。

社外取締役
小泉 淑子

海外グループ会社を含めたガバナンスの向上

 当社グループが持続的発展を遂げていくためには、国内はもとより海外グループ会社のガバナンス向上が何より大事であると考えています。当社は環太平洋を中心に、米国およびアジア・パシフィック地域に複数の海外グループ会社がありますが、歴史、文化、風土の異なる国でガバナンスを効かせていくのは並大抵のことではありません。もし、海外グループ会社で不祥事が起これば本体に跳ね返ってくることを肝に銘じなければなりません。グループガバナンスの構築のためには、本社とグループ会社の信頼関係が何よりも重要であり、そのためには双方向のコミュニケーションがきわめて大切です。本社から一方的に指示を送るだけでなく、絶えず現地に足を運び現場の声を聞く、そのうえで問題があれば軌道修正する、という地道な努力が欠かせません。当社は「圧倒的なリーディングカンパニーを目指す」トップ企業であり、常に注目されています。今後ますます海外事業が拡大していくなか、メーカーの基本である「現場・現物・現実」という三現主義の精神に、今一度立ち返る時ではないかと感じています。

危機管理能力のさらなる強化

 当社グループは現在、海外事業ポートフォリオの再構築によりサウスダウンシフトを進め、フィリピン、ベトナムおよびインドネシアでの事業を強化しているほか、米国でもさらなる投資と事業の拡大を図っています。こうしたグローバル展開は、一方で地政学的リスクやサプライチェーンリスクなど、世界的な規模の脅威にさらされます。そのため、世界の国や地域のリスクをしっかりと把握することはもちろん、徹底した危機管理が求められます。また、腐敗防止に取り組むことも重要なリスク管理のひとつです。贈収賄に対する考え方や習慣は国や地域によって異なります。贈収賄関連を含めた外国法は各国で絶えず改定されるため、本社の法務部が一括してフォローし続けるには限界があると思われますので、各海外拠点と連携を密にして現地の法律事務所とネットワークを築くなど、常に最新の情報を入手し法務部と海外拠点が連携する仕組みづくりが必要であると考えています。
 私は国際弁護士としての立場から、海外グループ会社を視野に入れた危機管理のさらなる強化策として、贈収賄対策のルール作りといった提言も行っていきたいと考えています。

太平洋セメントグループに期待すること

 2015年に社外取締役として就任した時に受けた印象は今も変わりません。当社は140年以上の歴史を有する国内セメント産業のリーディングカンパニーとして、ずば抜けて堅実な会社であるということです。しかし一方で、限られた業界の中だけで物事が完結してしまい、異業種との交流は少なく、従来のBtoBの視野で留まってしまっているようにも感じます。外の世界にもっと目を向けることで豊かな発想がうまれ、当社グループのサステナビリティがより一層強化されることを期待しています。

役員報酬とサクセッションプランについて積極的な提言に努めるとともに、戦略の実現についての議論も深めていきます。

社外取締役
江守 新八郎

指名報酬諮問委員会の役割について

 指名報酬諮問委員会の役割については、取締役の指名および報酬の決定に関する手続きの客観性・適時性・透明性の向上に取り組むことが重要だと考えています。
 社外取締役をのぞいた取締役の報酬は、現状、固定報酬、業績連動報酬および株式報酬で構成されていますが、いずれは中長期的な業績にも連動する報酬制度が望ましく、さらに明示的にサステナビリティ目標の達成度といったインセンティブを組み込むなど、役員報酬のあるべき姿を提言していきたいと考えています。一方、サクセッションプランについては、長期具体的な計画をもって経営候補者を育成することが最も重要であると思っています。管理職は職位に応じて計画的に育成されますが、選ばれた上級幹部職においては、その異動や昇進について経営トップ自らが育成方法を検討し実施していくことが大切です。例えば計画的に海外を含めたグループ会社で経営を経験させる、とりわけ厳しい状況にある会社ほどその人の手腕が磨かれ、有効な育成になると考えています。私は企業経営に携わってきた経験を活かし、サクセッションプランについて精力的に提言をしていきたいと思っています。

23中計に対する評価

 今年度は、「2020年代半ばのありたい姿、目指す方向性」に向けた第3ステップの取り組みとなる23中計の最終年度です。前提条件とした国内需要が減少し、さらに石炭価格の高騰などにより事業環境が大きく変化したことから、経営目標の達成は厳しい状況です。
 しかし一方で、このような時にこそ、外部要因を除いた当社の実力や競争力はどれほどのものか、これから解決すべき課題は何なのか、はっきりと見えてくるのではないでしょうか。すでに、主力の国内セメント事業では、販売価格政策を最優先として取り組んでいるほか、資源事業や環境事業においては、石灰石やセメントに頼らない付加価値の高いコアビジネスの育成に注力しています。セメント専業のトップメーカーである当社に求められることは、安定した収益を上げながら社会貢献も果たしていくことにほかなりません。23中計の総括をしっかりと行い、明らかになった課題を見据えて、次期中計が策定されることを期待しています。

社外取締役としての役割

 社外取締役の役割は経営の監督であり、社内のしがらみとはかかわりのない立場から、経営陣に対して忌憚のない意見を述べることであると考えています。また、従業員が経営陣に対して言いにくいと感じていることをわたしたちが代わりに発言することで、自由にものが言える雰囲気をつくることも大切な役割と思います。当社は女性活躍をはじめとするダイバーシティ&インクルージョンを進め、多様性を重視した戦略を打ち出しています。様々な価値観や考え方を柔軟に吸収することで、イノベーションが生まれることを期待しています。

広くステークホルダーの皆様の視点に立ってエンゲージメントの強化を提言するとともに、双方の間で信頼関係を築けるよう力を尽くします。

社外取締役
振角 秀行

ステークホルダーとのエンゲージメント強化

 私は国家公務員として、投資家と企業が建設的な対話を行うためのスチュワードシップコードや、コーポレートガバナンスコードといった制度設計に携わってきましたので、投資家と企業の直接的な対話の重要性を誰よりも理解していると認識しています。また、投資家との対話を通じて得られた視点を取締役会の議論に反映させることで、取締役会の実効性がさらに向上すると考えていますので、投資家と経営層が直接対話する場をさらに増やしていくべきであると思っています。私自身、投資家との対話が実現すれば積極的に臨み、当社の経営方針や中長期的な成長戦略について率直な意見交換を行い、企業価値の向上に貢献していきたいと考えています。
 また、当社の根幹であるセメント事業は、工場、鉱山の地元地域社会をはじめとする様々なステークホルダーの皆様によって支えられ、生物多様性や水資源といった環境を保全して初めて成り立っていることを、常に念頭におかなければなりません。地元地域社会と共存共栄を目指し、信頼され愛される会社になることこそ、当社のサステナビリティの源泉であると思っています。そのためには、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを活発に行い、当社の事業や考え方をもっと知っていただく努力が必要と考えています。セメント製造で廃棄物や副産物をセメントの原燃料として有効利用し、循環経済に貢献していることや、カーボンニュートラルに向けた先進的な取り組みを行っていることなど、このようなポジティブな情報の発信を強化するよう促すことも社外取締役の役割であると考えています。

事業戦略としての多様性の推進

 現在は、人的資本の見地から多様性が尊重されていますが、事業戦略においても多様性は重要であると考えています。当社グループの事業ポートフォリオは、グループの売上高比率で見ると、国内セメント事業、海外セメント事業、そして、資源、環境、建材・建築土木事業それぞれが1/3ずつと非常によくバランスがとれており、どれか1つがピンチになっても全体としては損失を最小限に抑えられる強みがあります。2022年度の損益は国内セメント事業の採算悪化を主な要因として、当期純損失という厳しい結果に終わりましたが、好調な米国セメント事業に支えられて営業利益は黒字を確保できました。これは主力の国内セメント事業だけに頼ることなく、海外展開をはじめとした事業ポートフォリオの多様化を進めてきた成果であるといえ、高く評価しています。
 さらに今後は多様性に加え、リスクヘッジとしての事業の分散も視野に入れた提言を行っていきたいと考えています。例えば、西海岸を中心に展開している米国セメント事業は、政治や需要の変動といったリスクを回避するためにも、中部や南部にも目を向ける必要があります。社外取締役としての視点を活かしながら、企業価値の向上に貢献していきます。

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