岩塊中の微生物によるセレン不溶化
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はじめに
セレンは天然に存在し、人にとって必須の微量元素のひとつですが、多量に摂取した場合には健康被害を引き起こす有害物質です。
高速道路や鉄道などのトンネル建設工事では、岩塊(掘削ずり)が大量に発生します。これらは循環型社会の実現に向けて再利用すべき資材であると捉えられています。
しかし、一部の掘削ずりには自然由来のセレン等の重金属類が含まれ、これらが地下水等に溶け出してしまうことがあり、人体に健康被害を及ぼす可能性があることから、対策技術が必要となります。
セレンは、6価と4価が水溶性、0価が不溶性の性質を示し、自然環境では6価および4価が混在しています。4価セレンは化学的な処理法である吸着、難溶性塩の生成および0価セレンへの還元で不溶化が可能となりますが、6価セレンは化学還元剤で還元されにくく、不溶化が難しいことが知られています。このようなことから、6価セレンに有効な不溶化処理技術の開発が求められています(図1参照)。
一方、酸素の存在しない嫌気環境下で6価セレンを0価セレンへ還元する微生物は土壌や海底堆積物などの自然界に数多く存在することが知られています。そのため、掘削ずり中にも同じ働きをする微生物が存在する場合、バイオレメディエーション※によるセレン不溶化処理が実施できる可能性が考えられます。
高速道路や鉄道などのトンネル建設工事では、岩塊(掘削ずり)が大量に発生します。これらは循環型社会の実現に向けて再利用すべき資材であると捉えられています。
しかし、一部の掘削ずりには自然由来のセレン等の重金属類が含まれ、これらが地下水等に溶け出してしまうことがあり、人体に健康被害を及ぼす可能性があることから、対策技術が必要となります。
セレンは、6価と4価が水溶性、0価が不溶性の性質を示し、自然環境では6価および4価が混在しています。4価セレンは化学的な処理法である吸着、難溶性塩の生成および0価セレンへの還元で不溶化が可能となりますが、6価セレンは化学還元剤で還元されにくく、不溶化が難しいことが知られています。このようなことから、6価セレンに有効な不溶化処理技術の開発が求められています(図1参照)。
一方、酸素の存在しない嫌気環境下で6価セレンを0価セレンへ還元する微生物は土壌や海底堆積物などの自然界に数多く存在することが知られています。そのため、掘削ずり中にも同じ働きをする微生物が存在する場合、バイオレメディエーション※によるセレン不溶化処理が実施できる可能性が考えられます。
- ※バイオレメディエーション
- 生物がもつ化学物質の分解能力、蓄積能力などを利用した土壌や地下水等の環境浄化技術。物理・化学的な処理に比べて処理時間が必要となる一方、低コスト・低環境負荷で広範囲の有害物質を原位置で処理できることから、利用拡大が期待されている。

トンネル工事の様子

掘削で生じた岩塊(掘削ずり)の破砕物

図1 微生物によるセレン不溶化処理のイメージ