ホームサステナビリティ新中期経営計画長期ビジョン 2050年のありたい姿

長期ビジョン 2050年のありたい姿


持続可能な社会の実現と
事業の飛躍的発展へ
確実な一歩を踏み出します

代表取締役副社長
朝倉 秀明

「2050年のありたい姿」「太平洋ビジョン2030」の戦略上の位置づけについてお聞かせください。

 新たな中期経営計画(26中計)を策定するにあたり、まずは絶対にぶれることのない軸を明確につくりたいという思いで長期ビジョンである「2050年のありたい姿」の検討から着手しました。そしてここには30年後に中核となる若手従業員の意見を取り入れることが大事であると考え、社内アンケートを実施したところ、「世界のセメント産業のリーダーになりたい」という共通のビジョンが浮かび上がりました。当社は国内トップのセメント専業メーカーであり、環太平洋地域でも一定のプレゼンスを保っていますが、世界のセメント産業のリーダーになるためには、規模感、利益水準、事業展開のエリアの多さなどにおいて海外メジャーに匹敵する地位を確立すること、さらにその過程においては、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーとの両立が欠かせません。経済性とのバランスを模索しながら、成長戦略としてカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを推進していきます。これにより、持続可能な成長を実現し、世界のセメント産業のリーダーとなることを目指します。
 そこからバックキャストして中間目標としたのが「太平洋ビジョン2030」であり、さらにこれらのビジョンを具体的な行動計画に落とし込んだのが向こう3年間の26中計です。26中計の経営目標・ガイドラインにおいては、売上高1兆円、営業利益1,000億円、営業利益率10%といわゆるトリプル10を目指しています。まずはこの目標値を着実に達成し収益基盤を盤石なものとしたうえで、「太平洋ビジョン2030」を実現し、「2050年のありたい姿」を目指していきます。

23中計は多くの指標において未達でした。
一方で、過去に例のない短期間でかつ大幅なセメント価格の改定が行われました。
どのようにふり返りますか?

 23中計で掲げていた経営指標の売上高営業利益率・ROEともに未達となった点は、厳しく受け止めなければなりません。主な要因はコロナ禍や地政学リスクを背景とした需要減少、資源価格の高騰が挙げられます。セメント業界は内需の低迷や業界の慣習により価格転嫁しにくい状況にあったため、その結果が23中計における国内事業の低迷として現れました。また、23中計で掲げた成長投資をおおむね計画通り実施した結果、有利子負債が増加しました。足元では営業キャッシュ・フローの増加により財務体質は改善傾向にありますが、財務基盤の強化は今後の課題のひとつです。
 一方で、2022年に過去に例のない短期間でかつ大幅な値上げに成功したのは業界としてエポックメイキングなでき事でした。今後は、原材料等のコストに応じた適正な価格維持について、ユーザーにご理解をいただけるよう努めます。
 そのほか、総還元性向を計画値通り達成できたことや、国内外の成長投資、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進捗したことは大きな成果であると捉えています。

2026年度計画

経営目標

売上高営業利益率
10% 以上
ROE
10% 以上

ガイドライン

売上高
1兆円 以上
営業利益
1,000億円 以上
ネットDER
0.5倍 程度
ROIC
7% 以上
売上高営業利益率、ROE(%)
売上高、営業利益(億円)

長期ビジョン実現の具体策として26中計が策定されました。
23中計の課題をどのように活かしていきますか?

 「26中期経営計画」の基本コンセプトは「3D Approach for Sustainable Future」です。国内事業の再生、グローバル戦略のさらなる推進、およびサステナビリティ経営推進とカーボンニュートラルへの貢献という3つの取り組みによって相乗効果を生み、企業価値向上につなげます。国内工場では、廃棄物・副産物の有効利用によってサーキュラーエコノミーの実現に貢献するとともに、混合セメント化を進めカーボンニュートラルの実現を目指します。混合セメントは海外での需要が高く、国内で生産したセメントの販売先の選択肢が海外にも増えることになることは消費期限が短いセメント産業では大きなメリットです。このようにカーボンニュートラルへの取り組みがセメントの生産・販売効率に寄与する等の相乗効果を期待しています。
 26中計の基本方針として、「太平洋セメントグループの持続的な成長と企業価値の向上」を掲げています。成長を実現するうえで国内事業の再生は欠かせません。シェア重視から収益重視への転換を図り、適正価格を維持することで収益改善につなげます。具体的には、国内の需要動向を踏まえ、国内工場で生産するセメントの品種を国内向けと海外向けに柔軟に調整し、生産体制の最適化を図ります。これにより、国内工場の操業を維持しつつ、海外での収益の拡大にもつなげていきます。併せて、国内の営業体制も見直します。これまでは、ユーザー1社に対してセメント、資源、環境など事業ごとに営業担当者をおいていましたが、今後は事業部門間の垣根を取り払い、トータルソリューションを提案できる体制を構築します。
これにともない、人事評価制度も見直していく予定です。
 海外事業は米国などでの投資が開花し、安定した収益を上げています。26中計では米国の旺盛な需要を取り込むべく、トレーディング事業を拡大します。特に西海岸における混合セメントの需要を見込んでおり、混合セメント拡大のための投資を含め1,500億円の成長投資を予定しています。アジアでは2024年度上半期からタイヘイヨウセメントフィリピンズ社の新ラインによる生産を開始しました。フィリピン、ベトナム、インドネシアとともに生産・物流の拠点とし、環太平洋でのプレゼンスを向上させます。

カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーは太平洋セメントグループの
サステナビリティ戦略の中でも特に重要です。
それぞれの課題と展望をお聞かせください。

カーボンニュートラル

 革新技術の開発が順調に進んでいます。コンパクトな設備で効率よくCO2を回収できる当社独自かつ世界初となるC2SPキルンについては、2030年までに技術を確立させ、それ以降はグループ内に順次展開していく予定です。すでに2024年3月から実証プラントが稼働しており、いずれはNSPキルンのように世界標準にしていきたいという展望も抱いています。
 一方で、経済性との両立が課題です。カーボンニュートラルなセメントは非常にコストが高くなってしまうため、技術革新や市場の状況を見据えながら検討せざるをえません。
 また、現在検討されている排出権取引制度や政府の補助金、セメント規格化等の後押しは欠かせません。当社としても継続的に働きかけていきます。

サーキュラーエコノミー

 セメント工場では廃棄物や副産物を代替燃料や原料として有効利用しながらセメントを製造しています。つまり、廃棄物処理施設の役割も果たしていると言えます。これは資源やエネルギー源が乏しく、かつ国土の狭さから最終処分場の延命を図らなければならない日本において、セメント産業が自らの特性を活かして練り上げてきた技術であり、社会的に大変意義があると考えています。また、年々自然災害は激甚化しており、災害廃棄物の処理が社会的な課題となっています。当社では日常的に発生する都市ごみや焼却残さだけでなく、災害廃棄物の受け入れも行っています。これは、サーキュラーエコノミーとしての重要性はもちろんのこと、将来の気候変動による災害増加に適応するうえでも重要な取り組みです。セメント産業はCO2の多排出産業として認識されていますが、このように環境に貢献している側面があることもぜひ知っていただきたいと思います。
 社会的にサーキュラーエコノミーの取り組みが進み、かつ熱エネルギー代替となる廃棄物が手に入りにくくなっています。また、工場の立地や設備によっても活用できる廃棄物の量に差があることが課題です。他の産業で扱いづらいような処理困難な廃棄物の受け入れのための技術開発を進めるとともに、生産体制の最適化によって廃棄物・副産物の受け入れという社会的責任を果たしていきます。

新潟県姫川港における能登半島地震の災害廃棄物(木くず)荷揚げの様子)

新潟県姫川港における能登半島地震の災害廃棄物(木くず)荷揚げの様子)

最後に、長期ビジョンの実現に向けて意気込みをお聞かせください。

 長期ビジョンを実現していくためには、当然のことですがしっかりと利益を出す必要があります。利益が出なければ成長戦略およびサステナビリティなどの重要テーマへの投資や、株主の皆様への還元も果たせません。ここ数年はセメント産業にとって逆風の状況でしたが、ようやく収益性や財務体質の改善の兆しが見えてきました。新興国需要がピークを迎えるこれからのタイミングを着実に成果につなげていきます。また、ビジョン実現には従業員の意欲・やりがいが不可欠です。私自身、ベトナムのギソンセメント社ができてから18年間ベトナム事業に携わり、海外オペレーションのダイナミズムや面白さに大変やりがいを感じました。人への投資や自由にチャレンジできる環境づくりにも注力していきたいと思っています。

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