ホーム研究・技術開発XRD/リートベルト法による高精度品質管理システム概要と特長

XRD/リートベルト法による高精度品質管理システム


>はじめに >品質管理VTR >概要と特長 >測定と解析 >今後の展望

利用価値の高い高精度かつ迅速な品質管理システム

セメントは粉末状の無機化合物の集合体で、水との化学反応により硬化する性質があります。表1に示すように、セメントの品質とは、硬化までの流動性や時間、硬化後の強度や発熱量などを指します。品質はセメント製品を構成する化合物の比率(鉱物組成)に強く影響されます。そのため、セメントの種類毎に適切な鉱物組成が異なります。そこで、出来上がった製品の鉱物組成を管理するシステムが必要です。
表1 構成する鉱物によってセメントが影響を受ける主な品質
これまでは、セメントの鉱物組成は化学組成から理論計算にて求めていましたが、リサイクル原燃料の増加に伴う微量成分などの影響により、実際の鉱物組成と差が生じる場合がでてきました。また実際の鉱物組成を測定するには、時間がかかり過ぎていました。
以上により、鉱物組成をより正確に常に監視できる管理システムが重要となりました。そこで当社が新たに導入したのがX線解析装置(X-Ray Diffraction:XRD)を利用したXRD/リートベルト法による高精度品質管理システムです。これにより、セメント製品中の鉱物組成を測定する完全に自動化された高精度の品質管理が可能となりました。時間も非常に短縮され、従来の手法では1試料当たり数時間以上かかっていたものが10分程度になりました。

従来の管理法

(1)顕微鏡を用いたポイントカウント法

試料を顕微鏡で観察して、人が直接的に鉱物組成を数える方法。
問題点
  • 観察する人間によって個人差が大きい
  • 粉砕されている試料や多孔質の試料は観察に適さない
  • 試料調整と測定に約5〜6時間以上必要

(2)蛍光X線の結果からボーグ式(理論式)で算出する方法)

試料を蛍光X線により化学組成を測定し、その結果をボーグ式に当てはめて、鉱物組成を確認する方法。
問題点
  • 主要な化学成分のみを考慮して計算するために、主要成分以外の微量成分を多く含む場合、実際の鉱物組成と誤差が生じやすい
  • 粉砕されている試料や多孔質の試料は観察に適さない

XRD/リートベルト法による解析方法

X線回析装置(X-Ray Diffraction:XRD)で試料のX線パターンを測定し、それをリートベルト法という計算方法で解析することで鉱物組成が直接的に算出される方法。
メリット
  • 短時間で測定が可能
    (ポイントカウント法では数時間を要していた)
  • 直接鉱物を算出可能
    (ボーグ式では化学分析からの理論計算だったため誤差を生じる場合があった)

リートベルト法とは

1969年にオランダ人結晶学者ヒューゴ・リートベルトが中性子回折のために考案した手法です。X線回折を適用したものをXRD/リートベルト法と呼びます。
XRD/リートベルト法では得られたX線回折図に対して、理論的な回折プロファイルを最小二乗法で精密化し、各鉱物の結晶構造パラメータを決定します。これにより結晶構造を精密化することが可能です。
近年、セメントのような複数種の鉱物を含む試料にも、本法が適用されるようになりました。この際、結晶構造と同時に尺度因子とよばれる各相の比率を示すパラメータも精密化されます。これにより、どの鉱物がどれだけ試料中に含まれているか知ることができるようになりつつあります。セメントの定量に関しては、当社は独自のノウハウを蓄積することで、最適な精度での定量を可能としました。
リートベルト法 概略図


Copyright© TAIHEIYO CEMENT CORPORATION All Rights Reserved.
ページのトップへ戻る