グローバルでのグループガバナンスと
多様性を武器に、企業価値の最大化を実現します
グループガバナンスの進化
不死原 太平洋セメントの伝統として、会長は業務執行から一線を引き、取締役会議長として監督に専念する体制が続いてきました。昨年度は新体制の初年度であり、手探りの部分もありましたが、田浦社長以下、執行サイドがしっかり成果を出してくれました。特にグループ会社を含めたガバナンス体制が軌道に乗り、コンプライアンスや品質問題、安全上の課題が目に見えて改善した一年だったと感じています。
小泉 社外取締役の立場から当社の経営を見てきましたが、特にここ数年グループガバナンスが根付いてきたと実感しています。
グループレベルでのガバナンスやサステナビリティに関する方針や各種規程類は、着実に積み上げられており、法律の改正にあわせた改定もすみやかに行われています。また、当社ではパソコン立ち上げ時に従業員自らが考えた安全やサステナビリティに関する標語が見られるようになっています。(掲載される標語はどれも大変示唆に富んでいます。)こうした取り組みの一つひとつがガバナンスの向上に奏功していると感じます。
不死原 当社グループは連結子会社だけで200社超、関連会社も含めると400社近くあります。特に海外子会社のガバナンスは重要課題です。米国の子会社であるカルポルトランド社では、監査部門を設置し、太平洋セメント本体から人材を派遣しています。昨年度は、内部通報制度の対象範囲を海外子会社にまで拡大し、コンプライアンス体制を一層強化しています。
小泉 2016年にカルポルトランド社を訪問した際は、当社側の従業員との間に距離を感じたのですが、昨年再訪した際は、現地スタッフと当社側が現地幹部と「仲間」として一体感を持って業務に取り組んでいる様子が見て取れました。グループ全体での連携や現場交流が進み、好循環が生まれていると感じます。
多様性とグローバル化への挑戦

小泉 当社グループ事業における海外比率が高まる中、経営幹部に外国籍の方や海外出身者を登用することが重要だと考えます。現地の声や視点を経営に反映させることで、意思決定の質やスピードが向上し、グローバル企業としての競争力も高まります。オンライン会議や通訳技術の進化もあり、物理的な距離は障害にならない世の中になってきました。例えば執行役員などの役職から段階的に登用を進めてはどうかと思います。
不死原 まったく同感です。グループの利益の半分近くがグローバル事業から生まれる今、経営の現地化や、本社における多様性の取り込みは不可欠です。現地の幹部や有識者を経営にどう取り込むか、取締役会でも真剣に議論を始める時期にきています。
小泉 リスク管理や危機管理の面でも、海外から学ぶことがあると思います。例えば、グローバルに展開している企業では有事のためのルールをつくるだけでなく、緊急時を想定したシミュレーション訓練が行われています。当社グループでも同様の訓練を実施したことがありますが、現地の手法を参考にすることで、一旦緩急時に活用できる余地が高まるのではないでしょうか。
サプライチェーンとESG経営の深化

不死原 グループガバナンスが軌道に乗った今、次の課題はサプライチェーンのマネジメントです。当社グループは購買基本方針を策定し、サプライチェーンに期待する責任ある行動を示しています。今後は、サプライチェーン企業との継続的な対話を通じて理解を促進し、必要に応じてサプライヤーを支援することで、サプライチェーン全体でガバナンスを高度化させていく必要があると考えています。
小泉 当社グループはカーボンニュートラルを重点戦略としていますが、成功させるためにはサプライチェーンの協力が欠かせません。さらに、フリーランス法の施行にともない、フリーランスとして働く方々との契約内容や労働条件を適正化することが求められています。当社グループのサプライチェーンでは「一人親方」も多く、サプライチェーンのマネジメントにおいて重要なトピックになると思います。
企業価値最大化と太平洋セメントの未来
不死原 長期的な国内セメント需要の減少を見越して、当社は30年以上前から海外展開を図ってきました。また、国内では福島の大規模酪農施設への参画といった新たな事業分野での可能性も追求しています。26中計では「売上高1兆円、営業利益1,000億円、ROE10%」の達成を目標としていますが、これは第一ステップに過ぎません。ここで一息つくのではなく、そこから例えば売上高2兆円、営業利益を2,000億円などと、成長の歩みを止めない会社にするためには、国内で、海外で何をしなければならないのか、経営陣としっかり議論を重ね、今後10年の成長戦略を早くステークホルダーの皆さまにお示ししたいと考えています。
小泉 当社グループの従業員は、経営理念に掲げる「持続可能な地球の未来を拓く先導役」として、誠実に業務に取り組んでいると感じます。経済成長のみならず、環境や社会への貢献を重視する姿勢は、国内外に誇れる企業文化です。今後もこの理念を大切にし、多様でステークホルダーに開かれた経営を目指して邁進していただきたいと考えています。