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グローバルビジネス


守りと攻めのガバナンスによって、
グローバル事業の基盤を強化します

信頼関係で強化する「守り」のガバナンス

深見 当社のグローバル戦略では、守りと攻めの両面からガバナンスを強化しています。守りの観点では海外における最大のリスクを贈収賄の問題と捉え、弁護士として企業法務や国際取引に長くかかわってこられた小泉取締役からご助言をいただいてきました。当社グループの主な取り組みとして、2017年1月に「反贈賄基本方針(ポリシー)」を定めて、以来法令遵守と違反行為防止を徹底しています。

小泉 すでに進出している地域を含め、海外には贈収賄の観点で要注意という国々が存在します。以前ある地域への進出を検討したときは、経営幹部の方々にお集まりいただき、細心の注意を払って臨むよう提言したこともありました。贈収賄の疑義が生じてしまうと、プロジェクトが中断して現場への資材搬入の遅れをはじめ、多大な影響が発生するリスクがあります。それから、内部通報制度については、言語面などに配慮したオペレーションの充実が必要です。

深見 グローバル内部通報制度は2025年4月に整備しました。通報制度はコンプライアンス強化の観点からも非常に重要と考えており、複数言語への対応をはじめ窓口の体制整備を進めています。海外拠点については、業務執行部門・リスク管理部門・内部監査部門がそれぞれの役割を担いつつリスク管理を行う、いわゆる「三つの防衛線」の考え方を取り入れ、監査役や監査部の設置のほか、子会社独自の取り組みと 併せて、何重にも監査の仕組みを整えてきました。

小泉 これは非常に大事なことで、当社はきちんと仕組みが整備されています。

深見 一方で、ただ仕組みを整えるだけでは形式的な監査になってしまいがちです。双方が「上から目線」「やらされ感」になっては駄目で、監査側と現地の方たちとのコミュニケーションが基礎となって、そこで築かれた信頼関係の上でこそ、言うべきことが言えるのだ、と常々伝えています。

成長のための「攻め」のガバナンス

深見 「成長」「攻め」についてですが、グローバル事業では、グローバルでの体制整備や人材育成をベースに、競争力・収益力の向上による企業価値の最大化を目指していきます。こうした取り組みを攻めのガバナンスとした場合、その本質は成長性を追求した際にともなうリスクのコントロールだと考えています。海外進出では各国に特有のカントリーリスクがありますが、リスクをまったく取らないで新しい事業はできません。リスクを最小限に抑えてチャレンジをするガバナンスが求められます。

小泉 当社では海外への進出や撤退の判断に関する情報も社外取締役に開示いただいており、透明性が高いと同時に我々の責任も非常に重いと感じています。私は、渉外弁護士として、日ごろより海外の弁護士とも情報交換をしています。海外企業と重要契約を締結するような案件が上程されてきたときは、各当該国の法務・ビジネスの最新情報をふまえつつ案件を検討しております。そのような情報はスキーム選択など取引手法にもかかわってくるでしょうから、情報の共有は大事と考えています。

深見 海外企業のM&Aや契約では、執行サイドで社内の議論を尽くしたつもりでも、最終段階でまた修正や調整が必要になる難しさがあります。リスク低減の点でも、小泉取締役には引き続き企業法務・国際ビジネスの観点からご助言をいただきたいと思います。

小泉 新規の国・地域への進出は、言語や宗教、法律、文化などの違いが大きなリスクになります。一方で、収益率が高い、地域全体として経済的発展が見込めるなど、事業戦略上魅力的なことも多く、積極的に取り組む必要があります。私も国際会議などでなるべく世界に出て様々な国の人と交流するようにしていますが、私が見てきた限り、積極的な進出を成功させている企業は、まずは現地で信頼できる人脈やネットワークをつくり、地道に取り組むところから始めているケースが多い。一見迂遠なようでも、そのようなプロセスを経ることも提言したいと思います。

「ガバナンス」を支える人材

小泉 コミュニケーションや信頼関係の構築はグローバル事業の成長・成功のためにも非常に重要だと考えます。海外子会社で現地の社長と話した際、こまめにパーティーを企画したり親睦会などに顔を出して従業員とのコミュニケーションを密に取っているという話を聞いて、従業員の気持ちや各人の事情を自ら汲み取り、信頼感を高める努力を怠らない姿勢に感銘を受けました。日本から幹部として海外子会社に派遣する場合でも、現地の方々から信頼され、リスペクトされるような人材を意識的に育て、そういう方を派遣することが大切です。

深見 実際に海外派遣された従業員を見ていると、特に技術者は語学には長けていなくても自分の技術や専門性で伝えるべきメッセージを持っていて、そこから信頼関係を築くことができているように思います。プロフェッショナルに根差した尊敬を得つつ、さらにコミュニケーション能力も備えることで、指導力を発揮できると考えています。

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