資源効率の向上
 当社では廃棄物・副産物をセメントの原燃料として再利用するセメント資源化を進めています。これにより天然資源の枯渇抑制といった観点から循環型経済の形成を推進するとともに最終処分場の延命にも貢献しています。
 これからも、セメントの需要動向や、社会からの要請などに柔軟に対応しながら、カーボンニュートラルと同時にサーキュラーエコノミーを実現すべく、新たな付加価値を創造し成長します。
 当社は環境経営方針に、サーキュラーエコノミーの構築を掲げており、マテリアリティのひとつとして重要な経営課題と位置づけています。セメント産業の特性を生かし、リサイクル資源活用技術のさらなる高度化を目指し、その深化に資する新規事業の立ち上げや、展開を図ることで、環境負荷低減と経済成長を目指していきます。当社グループでは、セメント製造プロセスを利用した処理困難廃棄物のリサイクルだけでなく、リン回収技術、セメント製造プロセスでの有用金属・貴金属回収技術、リチウムイオン電池処理技術などにより、様々な有用な資源を回収し、他産業と連携することで再利用を可能としています。
 サステナビリティ経営推進の基本方針のもと、各事業および研究開発部門において、展開・共有しながら、推進していきます。
2030年に向けたサーキュラーエコノミー実現のロードマップは、セメントの国内需要動向およびカーボンニュートラルの取り組み推進など、現在の社会的な状況をふまえ、以下の取り組みを推進します。
- 既存事業の優位性の確保
 - セメント製造における廃棄物処理量の確保による熱エネルギー代替率のさらなる向上
 - 混合セメント用混合材などに使用する石炭灰ソースの確保
 
さらに、サーキュラーエコノミーの深化に資する展開として、以下の取り組みを推進します。
- 処理困難物のひとつであるリチウムイオン電池のリサイクル
 - セメント事業に依存しない下水からのリン回収および肥料化実証事業への参画、廃太陽光パネル処理事業
 - 都市ごみ焼却残さからの貴金属回収・重金属除去技術の確立
 
地域社会との資源循環
 当社グループでは産業廃棄物以外にも、各自治体で発生している一般廃棄物、都市ごみ焼却残さや浄水汚泥・下水汚泥などもセメント原燃料として利用しています。
 2022年度の全国ごみ発生量は4,034万トンあり、そのうち焼却できなかった焼却未利用残さなど337万トンは、最終処分場に埋め立てられています。
 当社グループには、社会ニーズにあわせた都市ごみ資源化システムとして、焼却残さ資源化システム、AKシステム、エコセメント製造システムがあります。これら3つの技術メニューを駆使し、地域社会の資源循環の形成と環境問題の解決に取り組んでいます。
産業界との資源循環
 当社グループは石炭火力発電所から発生する石炭灰を引き取り、セメント原料のひとつである粘土の代替として使用するとともに、さらなる有効活用を目的としアッシュセンター事業を展開しています。また、発電所では石炭の燃焼により発生する硫黄酸化物の除去材として、当社は石灰石粉末を供給し、反応して生成した副産石膏もセメント原料として引き取り、有効利用しています。
 製鉄会社では、鉄鉱石から鋼材をつくる過程で鉱石中に含まれる不純物を除去する精錬工程があります。当社はこの精錬工程で使用される石灰石や生石灰を供給しています。また、精錬後に発生する高炉スラグなどの副産物を引き取り、セメント原料や混合材として使用しています。
| KPI・目標 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 
| 代替原燃料使用の推進 廃棄物等利用原単位400kg/トン-セメント以上を維持  | 
405.2kg/トン-セメント | 409.6kg/トン-セメント | 421.9kg/トン-セメント | 412.6kg/トン-セメント | 
| 廃棄物排出量 廃棄物最終処分量40トン以下を維持  | 
1.3トン | 1.9トン | 2.0トン | 13.9トン | 

国土交通省「下水道革新的技術実証事業(B‐DASHプロジェクト)」実証施設
サービスステーションにおける取り組み
サービスステーション(SS)では、セメント品種の入れ替えなどで発生するサイロ内の残余セメントを工場に戻し、セメントの原料としてリサイクルすることで外部委託する廃棄物量の削減に努めています。2024年度のリサイクル率は2023年度と比べて1.4%上昇しています。
廃棄物の利用拡大による社会的な環境負荷低減を貨幣価値として評価しています。
基本的な考え方
当社では、外部からの廃棄物利用拡大にともなう社会的な環境負荷低減効果を貨幣価値に換算し、セメント資源化システムの取り組みによる「外部経済効果」として評価しています。2024年度は934億円の社会的効果を上げたと算定しています。2024年度は、前年度より廃棄物の削減量が増加し、経済効果は対前年度比で約5%増加しました。
| インパクト | インベントリ | 削減量(t) | インベントリ 設定市場価格(円/t)  | 
外部経済効果 (億円)  | 
| 地球温暖化 | CO2 | 1,828,869 | 3,000 | 55 | 
| エネルギー資源枯渇 | 原油 | 99,805 | 18,400 | 18 | 
| 鉱物資源枯渇 | 天然原料 | 4,545,574 | 1,000 | 45 | 
| 最終処分場枯渇 | 廃棄物 | 5,436,755 | 15,000 | 816 | 
| 合計 | 934 | 
外部経済効果の算定方法について
- 当社で他産業の廃棄物リサイクルを行わない場合に、社会全体が受ける環境影響を独自の方法で算定したものです。
 - GCCAのCO2プロトコルで収集したデータなどから廃棄物・副産物を使用したことによる化石エネルギーや天然原料の使用削減量を計算しました。
 - 削減量(環境保全効果)に、当社で設定した市場価格を乗じて経済効果に置き換えています。
それぞれのインベントリの市場設定価格は2000年度から据え置いていますが、設定の根拠は次の通りです。
CO2:炭素税3,000円/トン、原油:輸入価格、天然原料:購入価格(仮定)、廃棄物:管理型処分場の処理費用(首都圏) - この算定方法による外部経済効果のうち、一部は当社損益に反映されています。
 
