価値創造へ向けて
当社グループのセメント工場における水資源の利用について、将来、顕在化する可能性のある課題として水リスクの分析、水使用の状況の把握に努め、水資源の適正利用を図っています。
方針と運用体制
 当社は環境経営方針に、水資源の保全・回復といった自然資本等への積極的な取り組みを重要な経営課題と位置づけて、ネイチャーポジティブの実現を目指しています。また、当社のマテリアリティについて、GCCAのガイドラインに基づき水資源の管理を行うことで水源保全を図っています。
 当社グループ鉱山においては、河川・湧水などの水資源の保全にも取り組んでいます。水資源保全の観点から、湧水や雨水は調整池を通し外部環境への影響を最小限に抑えてから排出されます。一部鉱山では生活用水用の井戸を掘削し、地元地域へ供給しています。
リスク管理
当社グループのセメント工場における水リスクをWRF※を用いて分析した結果、全工場のセメント生産量による加重の流域物理リスク評価点は2.38、最も評価点が高い工場では3.14となっています。また2024年度より流域物理リスクに焦点を当て、評価精度を見直し、環境への影響をより把握できるように変更しています。評価点の高い工場の状況分析では喫緊の課題は見出されておらず、引き続き水資源の適正利用に努めています。
※ 世界自然保護基金(WWF)が開発した水資源の流域物理リスクや流域事業リスクを評価するツールで、評価点は最高5.0で最もリスクが大きいとされる
 セメント工場で使用される水の多くは機器や排気ガス、自家発電の冷却用です。工場からの排水は、これら冷却水で水質汚濁防止法上の汚水ではありません。工場内で使用する淡水は生活雑排水をのぞいてすべて循環使用し、取水量の削減と排水による水域への影響の低減に努めています。海水は臨海工場の自家発電設備の冷却に使用され、そのまま海に戻されます。
 2024年度の淡水使用量は約1,143万m3で、セメント1トンを製造するのに淡水0.431m3を使用しました。この淡水は製品などの原料としてではなく、機器やガスの冷却用として蒸散したものが大部分です。
(単位:千m3)
| 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
| 表層水 | 5,355 | 5,527 | 5,346 | 4,374 | 4,974 | 
| 地下水 | 18,759 | 18,706 | 17,673 | 16,740 | 18,117 | 
| 用水 | 3,078 | 2,108 | 1,630 | 2,289 | 2,756 | 
| 淡水の総取水量(I) | 27,192 | 26,341 | 24,649 | 23,403 | 25,847 | 
| 海水の総取水量 | 146,232 | 146,894 | 145,476 | 145,758 | 138,724 | 
| 総取水量 | 173,424 | 173,235 | 170,125 | 169,161 | 164,570 | 
| 淡水の総排水量(O) | 13,447 | 13,246 | 12,792 | 13,021 | 14,414 | 
| 海水の総排水量 | 146,368 | 147,062 | 145,639 | 145,927 | 138,724 | 
| 総排水量 | 159,815 | 160,308 | 158,431 | 158,948 | 153,138 | 
| 淡水使用量(I-O) | 13,745 | 13,095 | 11,857 | 10,382 | 11,432 | 
水資源の適正利用事例
 現況では地域社会との間で水資源をめぐる特段の懸念事項はありませんが、水資源保全の観点から取水量の削減に努めています。今後も地域とのコミュニケーションを密にするとともに地域の水資源の適正利用に努めていきます。
 タイヘイヨウセメントフィリピンズ社では、工場用水用に掘った井戸から地域へ上水を供給しています。また、米国のカルポルトランド社はカリフォルニア州ロッキーキャニオン骨材採石場において、場内の雨水と湧水の集水・貯蔵方法を改善した水の持続的利用のためのシステムを構築しました。これにより水源確保ができ、井戸の増設や地下水の汲み上げ量を増やすことなく、操業に必要な水の供給を維持し、厳しい規制のもと場外排水を最小限に抑えることができています。
