人権の尊重
人権尊重をサプライチェーン全体の最重要課題と捉えた事業活動を実践するため、グループ全体を対象とした人権啓発活動を推進しています。
当社は2022年5月に国連グローバル・コンパクトに署名し、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止にかかわる10の原則に賛同し、その実現に向けて様々な取り組みを行っています。
当社グループは、「太平洋セメントグループ経営理念」および「行動指針」に基づき、2025年3月に「太平洋セメントグループ人権方針」を策定しました。国連が提唱する「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際人権章典※、「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」を支持し尊重するとともに、人権尊重に関するコミットメントの表明および人権デューデリジェンスや救済に取り組むことを定めた具体的な指針となっています。
また取締役会直属であるサステナビリティ経営委員会傘下の「人権・労働慣行委員会」では、人事部担当役員が委員長となり、グループ会社を含め人権に関する取り組みを推進しています。
※ 国際人権章典:国連総会で採択された世界人権宣言と国際人権規約の総称
国連グローバル・コンパクト
国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、国連と民間(企業・団体)が手を結び、健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティ イニシアチブです。
人権啓発活動
グループ会社を対象としたサステナビリティトップ層講演会を開催しています。2023年は「ダイバーシティ経営と先進事例」に関連した内容で実施しました。グループ会社に対しては研修支援、人権啓発の冊子配布、情報提供を行っています。
また、2023年度は、階層別研修では「最近の同和問題とハラスメント防止への取り組みと相談窓口の利用方法」をテーマとし、すべての従業員を対象に「心理的安全性の正しい理解」に関する動画研修を実施しました。
研修 | 実績 |
サステナビリティトップ層講演会 | 125名 |
本社階層別人権研修 | 285名 |
支店・工場・研究所の人権研修 | 1,979名 |
人権週間標語応募数(従業員・家族) | 1,752点 |
人権に関する相談窓口の運用
人権啓発推進委員やハラスメント相談窓口員を通じて、ハラスメント防止のための啓発活動や相談対応を行っているほか、(公財)21世紀職業財団を社外の相談窓口とし、相談しやすい環境を整備しています。
2023年度のハラスメント相談窓口への相談は9件ありましたが、いずれも相談者の要望に沿って適正に対処しました。
社内 | 全事業所に人権啓発推進委員およびハラスメント相談窓口員計59名を配置 |
社外 | 21世紀職業財団ハラスメント相談窓口に電話とウェブ相談による対応を委託 |
セクハラ | パワハラ | その他 | 合計 | |
社内 | 0 | 4 | 1 | 5 |
社外 | 0 | 3 | 1 | 4 |
人権デューデリジェンス
企業の人権尊重とは、自らが人権侵害に加担しないことのみならず、サプライヤーに対しても負の影響防止、軽減する責任を負うことと認識しています。
当社は2023年度に当社事業の中核をなすセメント製造事業関連サプライヤーを中心とした第1回人権デューデリジェンスを行いました。今後は調査範囲の拡大と定期的な実施により、当社グループの事業活動における潜在的な人権リスクを洗い出し、適切な手段によって未然に防止または軽減を図ることによって、企業価値の向上を目指します。
取締役会直属のサステナビリティ経営委員会の傘下である「ステークホルダー・コミュニケーション委員会」が主体となって、人権デューデリジェンスを実施しています。調査の結果はサステナビリティ経営委員会に報告されるとともに、それにより明らかになった課題の是正措置についても議論が行われています。サステナビリティ経営委員会では人権分野における外部アドバイザーによる講演も行い、経営トップ層の人権意識の向上に努めています。
2023年度に実施した第1回人権デューデリジェンスの調査対象は本社および当社直轄6工場のほか、国内グループ3社を含む計10社としました。実態調査と管理体制を調査した結果、実態調査においては労働安全衛生とハラスメント、管理体制調査においては法的救済へのアクセス、賄賂・腐敗防止、調達慣行(取引先管理)がそれぞれ重点課題として特定されました。また、これらを包括して、これまでの人権・労働慣行基本方針から、より国際基準を尊重した人権方針の策定が必要であると判断しました。
2024年度は人権方針の策定および特定された重点課題の是正措置に取り組むとともに、調査対象を主要国内グループ(セメント製造以外)、主要国内二次サプライヤー(2023年度の調査対象以外)、主要海外一次サプライヤーに拡大していきます。
また、当社が26中計で掲げた「太平洋ビジョン2030」の達成には、人権を尊重した事業活動が大前提となるため、定期的な人権デューデリジェンスとPDCAによる是正措置の継続によって、人権リスクの低減に努めていきます。
当社グループに関わりの深い15の人権課題に基づいて第1回人権デューデリジェンスを行った結果、5つの重点課題が特定されました。
重点課題の是正措置
2024年度の取り組みは以下の通りです。
- 太平洋セメントグループ人権方針の策定
当社は、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、「国連グローバル・コンパクトの10原則」などの国際ルールを支持・尊重した「太平洋セメントグループ人権方針」を2024年度に策定する予定です。 - (法的)救済へのアクセス
国内ではハラスメントやコンプライアンス違反を対象とした内部通報窓口が社内外に設置されており、当社および国内グループ会社の従業員はアクセスが可能ですが、海外グループ会社においては内部通報制度が未整備であることが課題として認識されました。2024年度から海外グループ会社における内部通報窓口設置の検討に着手し、早期の開設に向けて準備を進めています。 - ハラスメントと虐待
2022年度の社内外相談窓口への通報件数は14件でした。2020年度(4件)、2021年度(9件)と比較して増加傾向にあることから、人権啓発推進室ではハラスメントに関連する内部規定のさらなる周知や、人権啓発推進委員やハラスメント相談窓口員を通じたハラスメント防止のための啓発活動を強化しています。 - 労働安全衛生 <活動の実績>
2023年度の活動結果は、労働災害が死亡災害1件を含む133件、休業率は新型コロナウイルス感染症の5類変更にともない0.689%と減少しましたが、目標を達成することができませんでした。各事業所が働く従業員の意見をこれまで以上に吸い上げて、すべての従業員が安全保安衛生に関してベクトルをあわせ活動していきます。 - 賄賂・腐敗防止
当社グループはコンプライアンスを事業活動の基盤と位置づけ、2017年に「反贈賄基本方針」を制定しました。また、贈賄行為に対する規制が国際的に強化される潮流にあるなか、海外グループ会社を含めた贈収賄対策が必要であると判断し、2024年6月に「太平洋セメントグループ贈収賄防止基本規程」を制定しました。 - 調達慣行(取引先管理)の徹底
当社グループは2017年に取引先に倫理的行動をお願いする「太平洋セメントグループ購買基本方針」を定めましたが、現在では購買活動における法令遵守のみならず、人権や環境といった持続可能性に配慮する要素が不可欠であるとの判断に基づき、新たに2024年度に策定する予定です。