価値創造に向けて
当社は、セメント産業の一員として、気候変動への対応や生物多様性といった世界共通の課題に取り組んでいくため、セメント・コンクリート産業の世界的な組織体であるグローバル・セメント・コンクリート協会(GCCA)に参加しています。本産業セクターの信頼性向上と持続的な発展に向けて、技術開発や政策等の世界動向を迅速に把握し、自社の経営に反映させるとともに、日本国内では唯一の会員企業として、政策提言・情報発信等、地域の利益を担った活動を推進しています。

GCCAの概要
GCCAの母体は、1999年にWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の中に設置されたCSI(セメント部会)です。当社も参画し、セメント産業用CO2排出算定プロトコル開発に取り組んでいましたが、急速なEU-ETSの炭素価格上昇やセメント・コンクリートに対するCO2削減への強い社会要請などを受けて、これに対応する世界的な組織の設立が不可欠と判断され、WBCSD-CSIを継承する形でセメントメジャー4社を中心に当社を含む10社によりGCCAが設立されました。
2025年6月現在、当社を含む49社が参加していますが、参加企業のセメント生産能力は、中国をのぞく世界のセメント生産の80%以上を参加企業でカバーしていることに相当しています。
気候変動への対応、安全衛生、サーキュラーエコノミー、社会的責任、自然環境保護を活動の柱として策定されたサステナビリティ憲章に基づき、各種目標設定・ガイドライン策定・政策提言・各種国際機関との連携といった、国際的な枠組みでなければ対応できないような重要な活動が進められています。
GCCAの活動
当社は、GCCAの最高意思決定機関といえる理事会のメンバー企業であり、重要施策の意思決定に関与しています。また、理事会の活動を支える機能として傘下に個別テーマごとにワーキンググループが設置され、実務的な議論はこのワーキンググループで進められています。なお、GCCAでは年に一度、各社CEOやワーキンググループメンバーが一堂に会し対面で開催される年次総会の場が設けられています。気候変動、循環型経済や生物多様性といった重要課題に対して、積極的な議論が展開されます。また、対面での開催ということで、普段は直接会うことができない会員企業同士の貴重な交流の機会でもあります。
イノベーション分野の活動も活発であり、GCCAから大学等の研究者への資金提供プログラムであるGCCRN(グローバル・セメント・コンクリート・リサーチネットワーク)や有望なスタートアップ企業の探索プログラムといえるオープン・チャレンジといった先進的な活動に、当社としても参加しています。
以上のような活動のほか、上記サステナビリティ憲章をふまえる形で環境評価指標としての各種ガイドラインが策定されており、会員企業である当社は、これらを活用して、自社の統合報告書において、CO2排出量、排出物、安全衛生等の主要業績評価指標として公表しています。

具体的な活動事例
セメント・インダストリー・ネットゼロ・プログレスリポート
2050年の脱炭素に向けて「ネットゼロ・コンクリ―トロードマップ」が策定されています。セメント材料のみならず、コンクリートとして、設計・施工における取り組みも含めて、これらの施策を一体化させたロードマップであり、セメントという製品のライフサイクル全体におけるCO2の吸収効果を加味したシナリオが導入されています。
また、このロードマップに基づく会員企業の活動は、年に1度「セメント・インダストリー・ネットゼロ・プログレスリポート」という名称の冊子にまとめられ、セメント・コンクリート産業の先進的な取り組みとして毎年秋に開催されるCOPや、そのほか、各種国際的なイベントで配布されています。

各種ポリシーの策定、政策提言
産業として取り組む重要課題に対して、業界としての自らの変革を促し、またそのような変革に対して、世界レベルあるいは各国の政策面からの支援をえるため、様々なポリシー類が策定されています。2024年には脱炭素の推進に向けた重要施策である混合セメントの普及や、CCUSの導入に向けた環境の整備、カーボンプライシングの導入を後押しする重要なポリシー類の新設、更新が行われています。

研究開発:GCCRN
GCCAは、セメント・コンクリート分野でのイノベーションを推進するため、その基礎を担う大学等の機関での研究開発を資金的に支援するプログラム、GCCRNを設立しました。セメント産業のほか、プラントメーカーや混和剤メーカー等といった関連産業からも、設立の趣旨に賛同して参加しています。オンラインでの交流のほか、年に1度は対面での研究成果の報告の機会も設けられており、当社の研究員も積極的に参加し、情報収集、人脈形成の機会として利用しています。
