ホームサステナビリティ新中期経営計画2 グローバル戦略 特集 米国事業の成長戦略

2 グローバル戦略
特集 米国事業の成長戦略
─ 全米で知られる 企業を目指して ─


規模と高成長が両立する
米国市場において
グループのシナジーを発揮し、
当社の中核事業として
成長を続けます

常務執行役員 海外事業本部 副本部長
太平洋セメントU.S.A.社長
原 剛

米国におけるセメント産業

 米国セメント市場は、中期的には新規住宅の慢性的な不足、インフラ投資雇用法、2028年ロス五輪など需要を喚起する話題にこと欠きませんが、長期的にも大変魅力的な市場です。
 セメントはその性質上、技術革新などにより自ら新たな需要を生み出すことは容易ではなく、長期的には国や地域そのものがもつ経済力が需要を決める大きな要素となります。そのため、GDPとセメントの需要は強い相関関係があります。
 それを前提にセメント産業から見た米国経済の特徴・魅力を一言でまとめますと「先進国(大規模)、発展を続ける国(高成長)、さらには資源国(安定)としての特徴を併せもつ」ことだと思います。特に「変革にともなう成長」は魅力的です。新型コロナウイルス感染症拡大下で誰もがセメント需要減少を見越したなか、eコマースの物流拠点の増大やテレワークの急拡大による住宅需要といった変革が需要を押し上げ、2020年以降も成長を続けました。
 また、「資源国でもあり自己完結型経済(GDPに占める輸出入の比率が相対的に低い)」という要素も重要で、2021年以降の石炭価格高騰時も米国事業は大きな影響を受けることなく、安定した収益を上げることができました。
 さらに、米国のセメント市場全体で見れば、供給が需要を下回っており、不足分を輸入で賄う構造になっています。そのため後述の通り、当社の国際的な供給ネットワークと、米国事業のバリューチェーンがシナジーを発揮できる市場という点も魅力として挙げられます。

米国実質GDPとセメント需要の相関(2009-2023)
米国実質GDPとセメント需要の相関(2009-2023)
セメント産業から見た米国経済の特徴・魅力
米国経済の特徴・魅力 セメント産業への影響
巨大な経済規模と高成長率 全世界GDPの1/4超を占める全世界平均を超える成長継続 高水準かつ高成長の需要継続
巨大な人口規模と高増加率 世界第3位、30年間で3割増 住宅関連需要創出
変革の受け入れによる成長 経済構造の変化による成長 スクラップ・アンド・ビルドの新たな需要創出
自己完結型経済 低い輸入・輸出依存率 地政学リスクの影響小
当社の米国事業

 当社は米国にてカルポルトランド社(以下、CPC)を通じ「上流から下流までの総合建材事業」を展開しています。
 事業地域は西海岸全域にわたり、カリフォルニア州をはじめとするサウスウェスト地区ではセメント工場を、ワシントン州などノースウェスト地区では輸入セメントターミナルをそれぞれ中心として、セメント・骨材・生コンクリート事業等を展開、拡大してきました。2025年3月期の営業利益は当社連結の約5割を占める見込みです。
 今後も、地域や製品の組み合わせおよび事業構造を考慮して事業ポートフォリオの最適化を図り、積極的に事業を拡大する計画です。

当社米国事業の特徴と強み

 当社米国事業の強みの源泉は、高品質な製品とサービスの提供、およびそれにともなう強固なユーザー基盤に加え、M&Aなどにより築いた広範囲・大規模、かつ最適なセメント工場・ターミナル配置をもつ事業展開と当社のグループ力にあります。

広範囲・大規模・最適な事業展開

  • 米国ではセメントは出荷場所での引き渡しが主流です。そのためユーザーは輸送コスト、特に近年は人材確保を考慮し、需要地に近い工場やターミナルなどでの引き取りを選好する傾向にあり、当社の強みを生み出します。
  • リスク分散~安定したノースウェスト、高成長のサウスウェスト~という点でも大きな強みとなります。
  • セメント出荷拠点を有するエリアでの生コンクリート事業展開により、安定かつ高収益なモデルを構築しています。
  • 米国が過去100年間で保護貿易策を取らなかったのはわずか1/3程度の期間に過ぎず、伝統的に保護主義の傾向が強い国です。その中で国内に生産拠点をもつことは、長期にわたる安定的な事業継続を可能にする、大きな価値があります。

当社グループ力・生産部・設備部等

  • 生産部・設備部等との協働により、高い運転率の維持や原価低減を実現しています。
  • 中央研究所等との協働により、高い技術開発力を有し、カーボンニュートラル(CN)の取り組み等を加速しています。
  • グループの海外ネットワークにより高品質なセメントを安定的に輸入、強固なサプライチェーンを築いています。
ありたい姿の実現に向けた26中計の取り組み

 ありたい姿「2050年に米国中で知られる著名企業へと企業価値を向上させる」ことを目指し、次の通り26中計に取り組みます。

混合セメント化推進、セメンティシャスマテリアル事業拡大(CN取り組み)

  • 米国では低炭素である混合セメントの普及が急速に進んでいます。当社とCPC、両社の中央研究所が協働し、より低炭素な次世代の混合セメントの開発を行い、さらなる需要増に備えます。加えてCNの革新技術の開発にも協働して取り組みます。
    米国における混合セメント(主に石灰石セメント)需要推移
      2021年 2022年 2023年 2024年
    1月-5月
    西海岸5州 3.0% 2.5% 12.7% 17.9%
    全米 5.6% 23.7% 50.2% 54.7%
  • 一方、米国事業の課題として、西海岸地域ではスラグやフライアッシュ等のセメンティシャスマテリアルの調達が困難なことが挙げられます。CNと収益拡大の両立を成長戦略とし、当社海外ネットワークを活用してセメンティシャスマテリアルを調達し、事業拡大に取り組みます。そのための輸入ターミナルを増強します。
  • 米国でのセメンティシャスマテリアルを活用した事業ノウハウを日本・東南アジアへも展開します。

事業エリア拡大

  • M&Aなどを通じ、セメント事業の地域拡大、高収益な骨材・生コンクリート事業の規模拡大を目指します。

サプライチェーン強化

  • セメン・インドネシアグループ、ギソンセメント社(ベトナム)からの高品質かつ安定輸入を実現します。

CPC大学(仮称)設立

  • 人的資本強化を目指し、現在のCPC中央研究所内にCPC大学(仮称)の設立を進めます。同社出身者を講師とし、社内教育を行うだけでなく、公開講座等によりセメント産業の魅力やCNへの施策等を広く訴求し、産業全体の知名度向上にも取り組む計画です。2025年下期開校予定で、一般の大学のカリキュラムへの組み込みも目指します。
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